平素は、当協会の活動に格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
東欧や中東情勢の混乱など、国際情勢は予断を許さない状況が続いていますが、新型コロナウイルスの感染拡大により大きな影響を受けた日本経済はようやく日常を取り戻し、明るい兆しが見られます。景気は緩やかに改善し、賃上げ、設備投資、株価などはいずれも30年ぶりの高水準となっています。こうした経済の回復は、私たち人材サービス業界にとっても大きな希望であり、さらなる成長の機会と捉えています。
一方で、AIやDX(デジタルトランスフォーメーション)などデジタルテクノロジーの進展は目覚ましく、産業・社会構造の変化のさらなる加速が見込まれます。これに伴い、人材サービス業界は大きな変革を迫られています。デジタルテクノロジーを活用することで業務効率を大幅に向上させることができる一方で、新たなスキルや知識を持つ人材の育成が急務となっています。
特に、AIとDXの進展は、従来の業務の自動化や効率化にとどまらず、新たなビジネスモデルの創出や市場の変革をもたらしています。
このような変革の中で、人材サービス業界は、業界固有の人的資本を生み出すことが重要です。成長分野での仕事では、過去の「受け身の学び」から脱却し、個人で「考えるきっかけ」を意識して自己啓発することが求められています。
人材サービス業界の使命は、働く人々が自分の役割と居場所を見つけるために、「問う力」を身につける支援を行うことです。これにより、従業員が自身のキャリアを自ら築き上げる能力を高め、企業の成長に貢献することができます。
また、女性・高齢者・障がい者、グローバル人材などの多様な人材が、多様な働き方のできる社会を作るために、業界が変化の原動力となり、どのような環境にあっても常に人に寄り添い、互いに支え合う関係を築いていきたいと考えています。特に、女性や高齢者、障がい者がその能力を最大限に発揮できるような職場環境を整えることが求められます。
製造業や物流業界において、多様な働き方を実現するためには、柔軟な勤務形態やグローバル人材の適切な活用など、従来の働き方を見直すことが必要です。これにより、多様な人材がその能力を最大限に発揮できる職場環境を整えることが求められます。
さらに、昨今進行中の「内部労働市場と外部労働市場のシームレス化」にも大きな役割を担い、新しい日本の雇用ポートフォリオを支えるための仕立てを講じていきたいです。内部労働市場と外部労働市場がシームレスに繋がることで、企業はより柔軟に人材を採用・配置することができ、従業員も多様なキャリアパスを選択することが可能になります。
「過去の経験を公式にはしない」という強い想いがなければ、人材サービス資本の価値を最大化することはできません。私たちは高度化が求められる人材ビジネス市場で知恵を出し、仲間である会員企業を増やすとともに、会員企業の発展を図り、協会の活力としていきたいと考えています。
協会は、2020年に策定した「将来ビジョン2030」で「働く人・取引先企業・会員企業のトリプルウィン」を掲げています。このビジョンに基づき、人材育成・キャリア形成の支援、課題解決のための情報交換や勉強の場の拡充などに取り組んでいます。その原点は、この業界で働くすべての人が幸福感を感じることであり、それが人材サービス業の存在意義と考えます。
私たちは、人材サービス業が提供する価値を最大化し、働く人々が充実感を持って仕事に取り組めるよう、引き続き努力してまいります。また、トリプルウィンのビジョンを実現するために、企業と個人、そして協会全体が一体となって取り組んでいくことが重要です。
私はそれを成し遂げるため、30年以上の協会の活動実績を踏まえ、「日本BPO協会ならではの役割」を会長としてリードしていきますので、一層のご理解とご支援をお願い申し上げます。協会の活動が、皆様の成長と成功に寄与することを心より願っております。
2024年6月
一般社団法人日本BPO協会 会長 清水 竜一
Copyright © Japan Business Process Outsourcing and Staffing Association All Rights Reserved.