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未来を語る座談会

「ひとづくり力・
 ものづくり力」に挑む!

人材の高度化と発注企業の満足度に注力~両輪を担い現場の先頭に立つ~

座談会メンバー

テーマ1

製造請負・派遣事業における柱に「ひとづくり力」があります。技能協では会員企業向けの各種勉強会やセミナーを企画・実施していますが、みなさんの企業で取り組んでいる実践例を聞かせてください。

土肥 貞之氏

「キャリアアップをイメージできる運用を」
土肥

土肥
社員がキャリアアップをイメージできることを念頭に、制度と仕組みづくりに注力しています。ただ、制度をつくっただけでは浸透しません。「働く楽しさ」「やりがい」を社員が実感できることが大切だと考えており、表彰を毎月行っています。この制度は、「周りの社員が仲間の社員を推薦する」という形で選考しているのが最大の特徴です。
 この社員推薦賞の受賞者には部長陣と、月間MVPの獲得者は経営陣と会食の場をもち、会社の将来や方向性など多岐にわたる話をして理解を深め合います。幹部はそこで挙がってくる現場の声を重視し、改善に生かしています。制度を運用に落とし込むところまで意識することで、会社全体に活力がわき、内勤社員と現場の請負、派遣社員のすべてに「気づき」を与え、有効に機能しています。
石井
自社の研修センターを活用したハード、 ソフト両面からのスキルアップを実践しています。 従業員の将来設計、 キャリアパスに対してフォローできる体制を敷いて、 働く人にきちんと投資をして育成を図っています。  例えば、 集合教育、 OJT、 e-ラーニングなどによる研修のほか、 ジョブチェンジ制度を導入して、 他職種へチャレンジして職域の拡大を図ることができる仕組みも整えています。
営業や事務など間接部門の社員が「自分たちの仕事の真価は何なのか」を理解していなければなりません。 マーケットや法律はもちろんですが、 従事している仕事の社会性を伝えることに重きを置いています。 そこを基軸として、 現場の請負、 派遣社員にはチームワークの大切さの浸透を心がけ、 この両面がつながった時に「ひとづくり」が構築されていることを実感しています。
笹川
新入社員に経験と実績を積んで頂くことを大事にしています。新入社員には採用業務から経験する流れをつくっており、人手不足の中で採用がいかに大変であるかを体験することと現場作業を経験することにより、人財の大切さを深めて頂くことで営業など次の段階に移る際、あるいは現場の労務管理者になったとしても「ひとりの大切さ」が理解でき労務管理に対する意識が格段に違ってきます。この業界は「採用、営業、労務管理」が3本柱と言われますが、その基は「ひと」であり人間力にあると思っています。
屋敷
いろいろなテーマでの研修やセミナーを実施しておりますが、特に注力しているテーマは事業所全体でのコミュニケーションを大切にすることです。いわば「思いが伝わる現場」です。その環境づくりのために、事業所の責任者と補佐するナンバー2の育成に力を入れています。指示が現場で隅々まで伝わらなければ、品質や納期を保てないと考えているからです。
 具体的には、社内でリーダーシップ研修を計画的、体系的に年6回開催しています。この研修では、事業所を運営していくことの神髄を学ぶ場として、主にヒューマンスキルの観点からアプローチしています。コミュニケーションの基本より学び、事業所メンバーの状況を把握したうえで業務に対する動機付けをしていくのです。

テーマ2

「ひとづくり」の難しさと醍醐味を教えてください。また、これからの業界が目指すべき人材高度化の方策について各社はどのように考えますか。

石井 秀暁氏

「個人の能力を最大化させる事が肝」石井

石井
それぞれ生まれ育った環境が違う様に、人の価値観や考え方は千差万別であり、それらに合わせて育成方法もカスタマイズしていかなければなりません。もちろん、効率も重要であるため、一人ひとりにすべてにフルカスタマイズすることに限界はありますが、可能な限り個人の思いと会社の思いの融和を図りつつ個人の能力を最大化させるよう気を配っています。
 私たちの業界は、技能協の会員各社がそれぞれの視点とアプローチで創意工夫して人材育成に注力していますが、業界の発展と日本のものづくりの強化は直結しており、ある意味、宿命なのだと考えています。加えて、外国人の技術習得の方策も講じることが不可欠の時代に入り、ますます複雑化していくことが見込まれるため、「ひとづくりの高度化」という言い方が適当かとも感じています。
時代の流れの中で、一般的に無期雇用化が進んでいるように思います。そうであれば、なおさら「ひとづくり」は重みを増してきます。昔から言われる「手に職を付ける」ことで賃金面の向上にもつながるため、人材の高度化に資する研修や学びの場を計画的に実施しています。
笹川
働くことにつまずいた経験を持つ人もいます。長く続けられない弱い部分があるのでしょうが、そこを当社が下支えさせてもらい、一緒に成長させてもらっています。時間をかけて壁をともに乗り越えることができた時、そして派遣先から本人がお褒めの言葉をもらって現場のリーダー格に育っていく姿を見た時などは、ひとづくりの醍醐味を感じます。
 全員が何でもこなせるエキスパートではありません。派遣という働き方は多面的な役割を担っており、そこに寄り添えるのが派遣、請負事業者であると思います。
屋敷
請負事業所を運営している当社としては、研修を通じたコミュニケーション力などにより事業所全体が主体的に改善活動・効率化や安全衛生活動に取り組んでいける環境と風土を作ることだと思います。単に生産活動をするのみでなく、自分たちの職場をより良くするためにメンバーが団結していくことにつながります。
土肥
「ひとづくり」の難しさは、特に請負現場で感じており、当社は有能なリーダーを育てることに投資を惜しみません。派遣現場では「ハイブリッド派遣」を開発し、派遣現場でもリ-ダーをつけています。その際、次のリーダー候補者も選抜しています。
 その候補者に現場の経験を積ませたのちに、新しい現場のリーダーに抜擢しています。こうして育てた新しいリーダーが活躍して、お客様からお褒めの言葉をいただくと、まさに「人づくりの醍醐味」を実感します。今後はグローバル化をより加速させる方針です。

テーマ3

発注企業の業界に対する要望に変化はありますか。業界を牽引する技能協は、いかなる存在として役割をはたしていくべきでしょう。

笹川 英治氏

「請負の割合を高めてひとづくりを」笹川

笹川
現状において発注企業からは、請負よりも派遣が求められています。派遣は指揮命令権が派遣先ということもあり、事業者にとっては、派遣現場よりも請負現場の方が「ひとづくり」に取り組みやすいと感じています。
 請負では、社員の習熟度に応じて臨機応変な配置転換もできますし、あるいは「今回の失敗は今後の教訓に」と見てあげることもできます。そういう意味では、定着率はかなり請負の方が良いはずなのです。無期派遣という方式も広がっていますが、今後は精度を高めて製造請負のシェアを拡大したいと思います。
技能協としては、現在展開している通り、派遣法を含むリーガルチェックがされている情報やビジネスモデルや体制を迅速、スピーディに会員会社に発信していくことが大切です。
土肥
請負化の要望は増えてきています。採用難を背景に請負の話になっている様にも感じます。労務管理、外国人の採用、生産性、法改正の対応など会社の体制を迅速に整備していきます。技能協は、製造現場で業務請負の必要性を伝える存在になっていくべきでしょう。
屋敷
製造請負・製造派遣を問わず、人を通じてモノづくりに関わる会員企業に対し、それぞれの企業が安心・安全・信頼をもって発注企業より評価されるよう、今後も協会としての支援に力を入れていく必要があります。
石井
労働者にとって国内労働市場を魅力的なものにしなければならず、低生産性、低成長、低賃金な環境であればそれを脱し、付加価値の高い人材が集まる環境にしなければ日本のモノづくりの発展は見込めません。
 各メーカー等に対して需給調整弁ではなく、私たちアウトソーサーの発展が日本のメーカー等の発展の一翼を担っていることから、業界の地位向上と適正な価格での発注へと変化を促す役割を期待したいと思います。一方で、メーカーなどにとって必要不可欠な存在であり続けることも忘れてはなりませんので、自助努力を怠ることなく前へ進んでいきます。

テーマ4

製造現場のコンプライアンスの原点ともいえる安全衛生活動ですが、現場ではどのような工夫と将来に向けた模索がなされていますか。

「品質も信頼も原点は安全衛生」齋藤

「会社はファミリー」という認識の中で、家族が機械で大けがをしたらどう思うかという発想でいつも考えています。請負業務の際に経験したことが大きく、発注者の工場の機械で事故が起きた時に、安全衛生会議に同席させてもらい、一緒のテーブルの中で改善策を立てて学ばせて頂きました。同じことが起こり得るかもしれない事案を未然に防止することにつながるからです。
 品質も信頼も原点は安全衛生にあります。請負であっても、派遣であっても、この経験を活かして安全衛生会議には参画させてもらう形をとるようにしており、現場のチームプレイとして事故は確実に減少しています。
屋敷
請負職場より開始した安全パトロールですが、派遣職場においても派遣先企業と連携し両社で実施することも増えております。また、発注先との安全衛生連絡会なども開催し、安全を確保する努力を続けております。
 先ほど、再発防止の分析という指摘も挙がりましたが、設備として不安要素があるのであれば、派遣先職場の改善を要望し協力いただくことが重要になります。営業部門においても、受注・配属の優先順位において安全衛生環境が整備されていることを念頭に置くことが定着しており、「安全第一」はこれまで以上に製造請負、派遣の軸になっていきます。
土肥
一定規模の現場には、当社の幹部が巡回することをルール化しています。安全衛生会議は発注者と合同開催を基本としており、小さな規模でも現場と支店との合同開催を実施しています。また、会議がマンネリ化して緊張感が欠落しないように、事業場同士でテレビ会議を行って情報共有に努めています。
石井
定期的な安全衛生会議の実施や啓もう活動を通じて、一人ひとりに常に安全を意識付けするとともに、不安全な現場があった場合は自社自ら、 もしくは顧客と交渉して不安全な要因を排除する活動を行っています。
 安全体制がなければ、働く人にも発注者にも選んでもらえなくなります。一朝一夕キャンペーンではなく、日常の中にあるのが安全衛生です。
笹川
業務上災害の事例をもとに請負事業部で共有し、再発防止に徹底的に取り組んでいます。また、多角的な分析も行ったうえで、創造力を養っていくという観点を重要視しています。安全衛生はまさに「常日頃から」の意識が大事なポイントで、社内全体の基礎としているものです。

テーマ5

法改正や社会の動きに敏感にアンテナを張って蓄積したノウハウを深化させています。日本経済や地域社会発展の一翼を担う業界として、行政などに期待することを聞かせてください。

屋敷 元英氏

「より実態に即した形での法整備を」屋敷

屋敷
今後もコンプライアンスに対する要請は更に強まり、労働者保護や働き方改革などの労働法制は時代の経過とともに変化していくと思われます。その変化において、より実態に即した形での変更をしていただきたいと考えます。業界も成長し、社会に貢献していくことが重要だと思っており、そのためにも協会として実態を行政に的確に伝えていく必要があると思っております。
 そうでなければ、業界も成長していけないですし、社会に貢献できなくなりかねないからです。
石井
健全かつ適正な経済発展こそ、ベストな労働者保護につながると考えています。すなわち、コンプライアンスを徹底し、労働者を大事にする企業が成長できる環境が整備されることが重要であり、法令違反を行う企業に対しては、行政の指導をもって健全化をさせて頂きたいと思います。イコール・フッティングで仕事をしたいのです。
笹川
2008年あたりから労働人口は毎年50万人以上減少している状況にあります。製造に限らず、サービス業などあらゆる分野で人手不足に陥っています。そうした中でも現実的には再就職や転職はプレッシャーもかかるし容易ではありません。働く入り口は、それぞれの人の状況やタイミングで選択すればよいと思いますが、派遣という門もあり、働くことで収入を得て、消費もします。本人にも地域にも有意義なことであり、その橋渡し役に奔走させて頂くのが人材サービス事業者です。
 そうした役割も果たしている事業者を行政なども有効に活用してもらえれば、潜在的労働力の掘り起こしがより活発に広がるものと信じています。
土肥
法改正に当たっては、経済、地域に対しての視点もバランスよくみてもらいたいです。急速な変化はアンダーグラウンドな業者の増加を招く危険性もあるほか、私たちのような志を持った事業者が悪質業者に脅かされるという本末転倒な状況になってはいけません。
 急いで変えるべきところと、都市部と大企業だけでなく、地方と中小企業も包含した一定の時間軸を要して変えていくべきところの見極めがなくなると、その副作用は大きく、主人公である働く人にしわ寄せがいってしまうことだけは避けたいからです。
業界、協会、行政がともにやっていけば良いと思うことはたくさん浮かびます。そこで、シンプルに俯瞰してみると、どこまでが業界なのかなという点がはっきりしていないとも感じます。業界がひとつの協会にまとまっていることが必要であると考えています。
 そうすることによって、例えば、団体が有しているのは資格制度なのか、許可制度なのかという類の課題も明瞭になっていくでしょう。製造請負優良適正事業者の認定制度も、その認定を獲得することで次につながるカタチを設けないと物足りません。政府の様々な施策について何らかの優遇措置を認定事業者に与えるなどといった、認定取得の高いハードルに見合ったメリットのある仕組みづくりが必要だと思います。
 認定事業者にふさわしい事業者であり続けるために、常にコンプライアンスに対する高い意識とアンテナを持って行動し、労働関係法令の改正動向や会社のニーズの変化に即応できる体制を整えているのが私たちであり、そうした仲間が多く集まっているのが技能協です。認定制度という一例を挙げましたが、それだけでなく活動の姿勢や政府や厚生労働省の施策を応援、推進する団体としてその成長を見て頂き、政策の一翼をこれまで以上に担わせてもらえればと願っています。
(第2部・了)

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