一般社団法人 日本生産技能労務協会創立30周年サイト

未来を語る座談会

歩みを礎に
業界の未来を拓く!

製造請負・派遣業界の将来を展望?環境変化とニーズを捉えた使命?

座談会メンバー

テーマ1

製造請負・派遣の国内唯一の事業者団体が業界を牽引して30年。節目を迎えた今、日本の雇用・労働に対する意識や考え方、法律面の改正・整備が大きな転換期にあります。

平尾 隆志氏

「未来につながる先進事例を」平尾

平尾
日本の製造業はAI、IoT、ロボット、デジタル化などを指す第四次産業革命が加速し、産業構造は劇的に変化していると思われます。さらに、日本の雇用・労働環境は、少子高齢化に伴い、高齢者・女性・外国人の活用と生産性向上など、働き方改革に向けた取り組みが国策として最重要課題となっています。製造請負・派遣業界は、産業構造の変化と雇用・労働環境の変化に対して、柔軟かつ先進的な雇用ノウハウや請負実績を積み重ね、人材育成を図って生産性向上に貢献し、未来につながる先進事例を多くつくりだしていくべきだと考えます。
清水(浩)
少子高齢化社会の訪れとともに日本の社会や労働市場の再構築が迫られています。加えてITの進展によってあらゆる産業やサービスの構造が加速度的に変わってきており、その中で新たな働き方や働く人の意識変化が進んでいる面もあります。とくに働き方については「個人」を主体とした環境整備の流れも確実に感じます。
 ものづくりの現場で働く人材を担ってきた当業界の役割は今後も不変ですが、この転換期を乗り越えるためにも、今まで以上に働く人と企業の双方の声に真摯に耳を傾けて信頼関係を強固にすることが大切になります。
青木
政府が進める「一億総活躍社会」の一翼を担う団体として、引き続き業界を牽引していく存在でなければならないと思います。そこで、誰から見た期待に対する役割を果たせばよいのかとの視点で考えると、まず協会会員に対してはサービスメニューの拡充や内容の充実に磨きをかけ、先ほど「先進事例」というキーワードも挙がりましたが、その認識で引き続きサービスの向上に努めていくのが大切です。
 また、悪質な事業主の排除が会員企業の利益につながる、との考えで一貫して行動していますが、会員企業のみならず、社会全体に期待されていることでもあるので一層注力していきます。
伊井田
少子高齢化に起因する人手不足から、国は我々人材業界を有効活用するために法改正を行い、よりクリーンな業界にしようとしています。我々リーディングカンパニーが集まる業界団体の役割としては、国が期待する以上の成果に導くのは当然のことながら、この社会においての人材業界の立ち位置を向上させていく必要があります。そして、多くの雇用を生み出すと共に、より多くの方々が「働く喜び」を感じられる社会にすることこそが、さらに業界団体を先頭に果たしていくべき大きな役割だと考えています。
清水(竜)
請負というビジネスモデルから振り返ると、実に歴史の古い業界です。ただし今、求められるニーズが激変していることを捉えないといけません。
 この業界に身を置いて30年以上になりますが、明らかに製造現場の様子は刻々と変わってきており、その時々の製造現場に対応する市場価値の高い人材をどう育てていくかがカギです。これは個々の会社でつかみ取り、感じとることが容易でない面もあります。そこで、技能協が全体の動向を見ながら進むべき確かな方向性を会員企業に発信していくことが重みを増すでしょう。

テーマ2

AIやIoTの進展が「働き方」に与える影響を具体的にどのように捉えていますか。併せて、企業規模にかかわらず繁栄していく活路と方策も関心事です。

青木 秀登氏

「企業規模は成長の絶対条件ではない」青木

青木
誰もが将来AIが私たちのビジネスをどう変えていくのかを考えなければいけない時代です。ただ、現場では私たちが曖昧模糊としている要件を整理してマッチングしたり、相談にのったりして課題解決している事実があり、個人的には、そっくりテクノロジーで代替するのは難しいのではないかと思います。つまり、人材とテクノロジーを上手く育成・活用した会社に勝機が訪れる可能性が高まっていると考えます。
 そのような観点からみても、「企業規模は成長するための絶対条件ではなくなっている」と感じます。社会に必要とされる会社かどうかが問われる時代になったのです。
伊井田
AIやIoTの進展、FA化が進み、現在の製造現場での“人からロボット”への代替が進む部分は当然あると思います。しかし、かつての産業革命がそうだったように、科学が進歩してもやはりその先には必ず“人”を必要とする部分が出てきます。その点に関してはあまり大きくは心配していません。
 一方で、やはり現状の「働く場」は大きく変化し、各現場では今までとは違う業務へシフトをする必要も出てくるため、我々は「働く場」を広げ、かつ人材教育等に注力し、変化に対応した“働く場の創造”と“人材の育成”が必要です。
清水(竜)
既に製造現場はAIや自動化を使った流れが進んできています。例えば電子デバイスがそうです。実際に製品を造っているのは機械で、その保全を含めてアシストするのが人の仕事になってきています。
 規模が大きく、多岐にわたってニーズに適した人材を育成できる会社はそのやり方で進めればよく、規模が小さい、地域に密着している会社はより発注者の特性に合った人材育成に取り組むことで確かな活路をつかむと見ています。
清水(浩)
製造業に限らずAIやIoTの進展によって従来の職種や働き方が変わるのは避けられません。現場でのオペレーションや改善方法など、これまでのやり方が通用しなくなる場面も出てくると思いますが、技術革新や環境変化によって新たな職種や従来とは異なる生産技術・手法が広がる可能性も、あるいは機会もあります。
 変化を恐れるのではなく、生まれ変わる産業を支えるパートナーとしての布石を積極的に打っていくべきです。
平尾
日本の製造業におけるAIやIoTそしてロボット化は、今後ますます加速すると想定されます。さらに、グローバル化に向けた日本の製造業は世界最先端の技術を高度化していくために、AIやロボットの設計・開発・製造・保守など新たな技術ノウハウの蓄積と、先行き不透明な状況を確実なものとしていくための人材の確保と育成を図っていくことが重要となるでしょう。
 日本の工場は世界のマザー工場となり、今まで以上に変化のスピードを加速させ、成長していかなくてはなりません。常に変化を先取りし、顧客とのパートナーシップに基づいた人材育成を図っていくことで繁栄していくことが大切です。

テーマ3

発注企業が「ものづくり日本」の将来に抱く不安のひとつに人材不足が挙げられ、製造業に不足しているのは「人手ではなく人材」だと聞かれます。事業者団体である技能協の果たすべき役割は。

伊井田 栄吉氏

「人材育成を軸にものづくりをリード」伊井田

伊井田
やはり「人材育成」が最も重要なポイントとなると考えています。“日本のものづくり”の下支えを担う我々がより高度なスキル集団になることで、発注企業はさらにコア業務に集中することが可能です。日本のメーカーがこれからの世界と戦っていくためには、発注企業と我々とで協力関係を深め、より高度なレンジでの役割分担を行い、さらによい“ものづくり”を実現する必要があります。技能協会員の我々が率先して人材育成体制を充実させ、日本のものづくりをリードする責務があると考えています。
平尾
高齢者や女性そして外国人労働者など、多様な人材の働き方を提案し、多くの雇用創出と雇用条件や環境づくりに傾注しなければいけません。従来の雇用慣行の常識を見直し、いかに働きがいのある魅力的な職場環境を築いていくのか、多くの幅広い業種や職種での人材活用成功事例を積極的に発信していくべきでしょう。また、業界団体として、人材育成のための教育投資も、産官学共同で取り組み、欧州で取り組まれている教育基金などの仕組みも検討していく必要があります。
青木
不足している人材を増やせるかどうかは、社員への教育にもよるので教育を怠ってはならないと考えます。技能協では数多くの教育ツールやカリキュラムの提供、旬なテーマのセミナーや勉強会などを提供、発信してきており、この中には同業各社のノウハウを多く含んだ貴重な内容も入っています。最新、最前線の法律や同業の事例を学ぶことによって、会員外の会社との差別化が大きくはかられるでしょう。
清水(竜)
育成する仕組みを持っていることが大前提です。ただし、OFF-JTで学習する研修センターの内容と、OJTの計画的にスキルを上げていく内容がきちんとリンクしていないと上手く人が育ちません。技能協は会員企業の現場の動きや悩みに気を配り、良い取り組みを吸い上げて会員各社に発信、示唆していくという役割が重要になると考えます。
清水(浩)
当社の創業理念に「日々研鑽」という考えがあり、「人は育てるものである」という意識のもと人材育成への取り組みを重視してきました。技能協としてもこうした会員企業の事業活動を多面的に支えるような役割がより求められていると思います。今後も業界唯一の団体として、会員企業と一体となって、「働く人」「企業」「社会」からより信頼される業界づくりを担っていく必要があります。

テーマ4

会員企業の業績と知名度の向上、社会的地位の確立を使命に掲げる技能協は、グローバル競争の荒波をどう乗り越えていきますか。

清水 竜一氏

「前向きな労働移動のマッチングに応える」
清水(竜)

清水(竜)
生涯現役時代の到来と、機械化の進展で近い将来に人材が余剰する業界に対して、前向きな労働移動のマッチングに応えていくべきです。他方、外国人労働者の受け入れ緩和の政策も聞かれます。外国人に日本の生産系作業職を真に好きになってもらう環境づくりが重要です。この側面でも、私たちの業界のおかげで外国人の働きやすさが正常になったのだな、と認識してもらえるようにすることが、社会的地位の確立を醸成するひとつの方策になると思います。
青木
現在の業界の様子を技能協会員の協力で定点実施している「製造請負・派遣の事業動向調査」でみると、平成25年前後から高水準が続いています。人材不足という背景はあるものの、会員企業の多くが大きく成長しているのは事実です。そうした中で、人材サービス業界は「社会インフラ」といっていただける時代になって来ました。技能協は、荒波を「乗り越える」のではなく、グローバル競争の波を「掴む」手助けをしていきたいと決意しています。
平尾
協会にとっての最重要課題です。まずは、全国の事業者が必ず入会したくなる魅力ある協会となることはもちろんですが、社会的な存在意義や役割を果たしていくためには、法令順守と優良事業者と認められる健全な事業主の成長が必要不可欠になります。法改正や業界の劇的な変化に事業者の淘汰は加速すると思われます。理事会社が中心となってリーディングカンパニーとなり、多様で先進的な高度な経営マネジメントの実績とノウハウの情報提供を通して、大きな変化を乗り越えることにつなげていきたいと考えています。
清水(浩)
絶えず変化する社会環境の中で、業界の健全性を継続的に発信し、社会と共有することで業界と会員企業への理解を深める努力をしなくてはなりません。人口減少が進む日本においては、国内の潜在的労働力もいずれ限界が訪れます。先ほども話題に挙がりましたが、一部業種では外国人材の規制緩和の動きもあり、人材活用においては、さまざまな選択肢を視野に対応しなくてはなりません。つまり、多様な価値観を吸収できる職場づくりや人づくりが求められているのです。
伊井田
働くことに対する「価値観の多様化」はより加速しています。そして、この多種多様な志向や価値観に対応出来るのは私たち人材業界のみであり、社会的役割は大きなものを担っています。残念ながらその“役割”に関しての社会的認知度は満足できるところに達していません。技能協全体として、その“社会的役割”を広く認知させていく必要があります。その点をクリアー出来れば、グローバル競争の波も勝ち抜ける体制が実現できるはずです。

テーマ5

行政や経済団体、労働組合などと協議の場を広げ、深めてきた技能協。さらに繋いで前進する姿を展望したとき、10年後のあるべき姿をどのように描いていますか。

清水 浩二氏

「先人に感謝、未来へ技能協の存在感発信」
清水(浩)

清水(浩)
前身団体の日本構内請負協議会の立ち上げメンバーに当社創業者の故清水好雄も参画させていただきました。今後もその意思を引き継ぎながら、時代や社会のニーズにフレキシブルに対応しながら発展し続けていくべきです。
 当社社是で「社会貢献」を謳っていますが、近年この視点で果たすべき責任がますます強まっています。我々の活動が仕事のマッチングだけにとどまらず、継続的なキャリア開発・サポートを通じて多様性を生み出し、社会とリンクしていることを丁寧に伝えていくことも大切ではないでしょうか。
 当業界が社会から選ばれているという立ち位置と存在感が示せれば会員企業にとってもメリットが大きいと感じます。技能協として行政や関係団体との関係づくりをさらに強め、会員企業とともに業界の多様性や健全性を発信していけると、より良い事業環境が築けるものと信じています。
平尾
製造業各団体や行政・労働組合そして人材サービス業界各団体との連携は今まで以上にオープンに広げ、深めて行く必要があります。日本の国策である一億総活躍社会の実現に向けた働き方改革の成否は、人材サービス業界に掛かっていると言っても過言ではありません。
 10年前を振り返ると、私は当時、もうひとつの業界団体である日本製造アウトソーシング協会(JMOA)の理事を務めていました。技能協と連携し、そして大同団結するという流れの中で大きなイノベーションが生まれ、活動に躍動感と弾みがつきました。
 そうした意味でも、10年後には全事業主が必ず入会し、全国主要地区で協議会を開催し、地区単位での各ステークホルダーとの連携が行われ、社会的に大きな役割を果たしていきます。製造請負・派遣業界で働く人たちが、夢や希望そして自信や誇りが持てるようにしていけるように邁進して参ります。
伊井田
日本のより一層の発展を考えたときに、「人材」をいかに的確に活用できるかが一番重要なポイントとなるのは間違いありません。度重なる法改正や働き方改革もそうですが、行政や各団体ともに、いかに的確にかつ適正に「人材」を活かすかの方法を模索しています。
 技能協としては、さらに行政や各団体との関係を深め、日本全体の働き手がより生き生きと活躍できる場を一丸となって創出し、日本のものづくりを発展させていく必要があると考えています。
清水(竜)
製造請負・派遣で働く人たちがもっと輝いていくためには、私たちがより高度なビジネスモデルに挑戦しないといけないと感じています。発注メーカーが私たちの業界の中でしっかり努力している会社に、「こういう生産計画で実施したいがどうだろうか」と相談してくれるような日本型のEMS(電子機器の受託生産サービス)を目指すべきだと考えています。
 そうなれば、そこに見合った人材育成に真剣に向き合わないといけないですし、ひいては現場で働く人たちの市場価値がもっと高まります。製造分野の人材を扱う生業として、これからはこの一歩を踏み出していく覚悟が必要だと思います。絶え間なく、人材の高度化を突き詰めていく会社だからこそ、私たちの業界は磨かれていくのです。
青木
30年間にわたり、ここまで襷(たすき)をつないで来てくださった先人、汗をかいてくださった先輩の皆様に心から感謝を申し上げます。また、特に草創期において協会運営のために物心両面で底支えしてくださった会社の存在があったことも、ここに刻んでおきたいと思います。
 節目を迎えて未来を展望すると、AIやIoTなどテクノロジーの進展に目を背けることはできないのですが、最終的には「人が主役だ」と考えています。今までのように人を中心に置く業界団体であり続けたいと考えています。
 そして、すべての方々が生き生きと働いていけるサポートを人材サービスの他団体や行政、労働組合などと一緒に未来を切り開いていけたら素晴らしいなと思います。
(第1部・了)

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