日本BPO協会は1989年、日本構内請負協議会(当時)として、健全な製造請負の発展を願う高い志を持った会員企業17社で発足しました。当時、日本の製造業の間では生産性の向上を目的として、特定の知識や技術を持つ労働者のアウトソーシングが普及し始めていました。一方で、製造請負業界で働く人の雇用は不安定であり、業界について誤解されることも多くありました。そこで当協会は、労働者が安心して働ける環境を整え、製造請負業界の姿を社会に正しく伝えることを目指した業界団体として活動を開始しました。
製造請負・製造派遣を中核としたアウトソーシングは、日本の製造業の発展において大きな役割を果たしてきました。
現在、当協会には製造請負・製造派遣や物流などの事業を行う162社(※)が入会しています。行政や経済団体などステークホルダーとの意見交換を活発に行い、協力関係を築きながら、雇用の安定や人材育成、コンプライアンスの徹底をはかる活動を行っています。
2006年、偽装請負がメディアで報じられ社会問題となりました。偽装請負とは請負契約をしていながら実態が労働者派遣であるものを指します。派遣元・派遣先の様々な責任が曖昧になる傾向があり、労働者の雇用や安全衛生面など基本的な労働条件が十分に確保されづらくなります。
コンプライアンスを遵守して活動している企業にとって、一部の事例によって業界全体のイメージが悪化することは大きな問題でした。当協会は2007年、厚生労働省の委託事業「請負事業適正化・雇用管理改善推進事業」を受託し、製造請負事業を健全で適正に保つための活動を継続的に行ってきました。また国が定めた製造請負優良適正事業者認定制度(GJ認定制度)を運営し、制度の普及に向けてセミナーの開催やガイドブックの策定など情報発信にも積極的に取り組んでいます。
2008年、100年に一度の金融危機となったリーマンショックが起こり、日本の製造業は大きな打撃を受けました。あらゆる業種のメーカーが生産中止や減産に追い込まれる中、製造請負・製造派遣の業界においても労働者の雇用確保ができない状況が生まれました。そのような状況から、当協会では倫理委員会を立ち上げ、会員企業が守るべき社会的責任を定めた「CSR宣言」を発信しました。
また、リーマンショックの打撃から回復しつつあった2011年3月、東日本大震災が起こり、被災地に甚大な被害をもたらしました。特に東北地方に拠点を置く製造請負・製造派遣事業者や派遣先が被災し、労働者の雇用が深刻な問題として浮上しました。当協会は所属する企業同士の繋がりなどを活かし、製造請負・製造派遣業界の団体として雇用の創出に貢献しました。
震災直後、厚生労働大臣から当協会などに対し、被災者への就職支援の要請がありました。当協会は同年4月、被災地区雇用支援センター(2012年「復興推進室」に改組)を立ち上げ、その後4年間で被災地域において3万人以上の雇用を生み出しました。これが被災地における雇用の回復の一助となりました。
2020年からのコロナ禍においても経済が不安定になり、雇用の確保が難しい状況が生まれました。当協会は経済3団体と厚生労働省に対し、派遣労働者の雇用安定や休業手当に関する要望を提出しました。また2021年には、日本労働組合総連合会との間で「派遣・有期雇用労働者の雇用の確保・処遇の向上に向けた共同宣言」に調印しました。
労働者がキャリアアップを図り長く安定的に働くことができるよう、現場の声を行政などに伝える活動も継続的に行ってきました。
2015年9月には労働者派遣法が改正されました。改正に向け2013年より、当協会の代表が厚生労働省の労働政策審議会「職業安定分科会労働力需給制度部会」にオブザーバー参加し、現場を熟知する業界団体として実態を具体的に伝えました。学識経験者、労働者代表、使用者代表に加え、業界の立場からも多面的な課題提起を行った結果、派遣法改正は労働者の処遇改善やキャリアアップを強化するものとなりました。
このように業界のさまざまな転換点において、当協会は労働者の雇用の安定や創出、人材やキャリア育成につながる取り組みを行ってきました。
いま、少子高齢化により人手不足が深刻化しており、デジタルテクノロジーの進化と共に産業構造も著しく変化しています。製造請負を軸として発展してきた当協会は、近接する物流分野にも事業を拡大させています。2014年には物流倉庫での人材サービスを行う8社が中心となって物流部会を発足させ、現在30社まで参加企業が広がっています。物流部会では物流分野での人材育成や定着、コンプライアンスの徹底を目指した意見交換や教材の作成、セミナーの開催などを行っています。
2021年、当協会は名称を「日本BPO協会(Japan Business Process Outsourcing and Staffing Association)」に変更しました。これは社会情勢が変化し、会員企業の活動の幅が製造請負・物流を核としてアウトソーシング全般に広がっていることを踏まえたものです。2023年には、技術分野の人材サービスを核とした企業4社でエンジニアリング部会を立ち上げるなど、社会の変化やニーズに合わせて活動領域を拡大し続けています。
※2024年1月現在
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